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Stay Gold〜翔と智のラブラブ新婚日記

第38章 忘却の彼方に…、の巻


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「……………」



俺は、高島先生を見送った後

玄関先でぼんやりと立ち尽くし、その場を動けずにいた



「で、どこからどこまでを覚えてて、何を忘れてるんですって?」



そんな俺に、リビングからニノが声をかける

でも、俺は黙ったまま、相変わらず玄関に立ち尽くしていた



「ねぇ、潤くんは話しを聞いてたんですよね?

どうなってんだか教えて下さいよ」



どうにも返答が期待出来そうにない俺に問うのを諦めたのか、今度は松本くんにそう言って詰め寄るニノ



「……それが……」



俺と一緒に智くんの検診に付き添った松本くんが

その問いに、珍しく歯切れの悪い返事をした


俺は、それを背中で聞きながら、ボソボソと小さな声で言った



「………俺と出逢ったコトから全部、智くんの中では無かったコトになってるんだよ

今の智くんの世界の中に、俺は存在してないんだ」

「どう言うことですか?」

「………」

「……つまり、だ」



再び黙り込む俺に代わって、松本くんが話しの続きを話し始める



「櫻井くんに関する事が全て記憶から抜け落ちてしまっているみたいなんだよ

だから、あいつの中では、未だに俺の愛人をしてるコトになっているらしいんだ」

「えっ…でも、それじゃ…色々と辻褄が合わないんじゃ…」

「俺に見合い話が来た辺りからの記憶が、曖昧になってるんだよ

その辺りから、所々記憶が抜けてたり作り替えられたりしてて…」

「そんなコトって…」



どうにも納得が行かない様なニノの声に

俺は、玄関のドアをぼんやりと見詰めながら応えた



「俺の記憶イコール、死んでしまった赤ちゃんの記憶に繋がってしまうから

…だから、全部無かったコトにしちゃったんだろうって…先生が、言ってたよ」



そう言って、ズルッと鼻水をすすりながら

俺は漸く振り向いてニノの方を見た



「まだ泣いてたんすかアンタ!

てか、汚いから鼻水拭きなさいよ!」



振り向いた俺の有り様を見て、思い切りイヤな顔ををすると

ニノが、ティッシュを箱ごと俺に投げつけた



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