第38章 忘却の彼方に…、の巻
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自分こそが悪魔の様な恐ろしい笑みを浮かべた戸田さんが
僕を見下ろしたまま話しを続ける
「そうこうしている内に、こともあろうか悪魔が順調に育っている事が解って…
だが、私は直ぐに理解した
神が、早く悪魔を始末しなさいと私に掲示しておられるのに違いないと」
そう、得意気に語る戸田さんの
携帯電話を背中に隠した方と逆の手が、僕に向かって伸びてくる
それでも
僕は身じろぎも出来ずに居た
「そして、計画を直ぐに実行しなくてはならない事に気付いたのだ
今、この時に」
「………や……め、て………」
震えながら、やっとの思いで声を絞り出し、やめてと懇願する僕に
戸田さんが、何時もの取り澄ました作り笑いを浮かべて言った
「……運が良かったら、あなたの命は助かるかも知れませんね
その時は、神の深い御慈悲の賜物だと思って感謝なさい
その腹の中の悪魔は、確実に助からないだろうけど。」
「やっ…!!!」
やめて、と
そう叫ぼうとした瞬間
戸田さんの華奢な手が、僕の胸倉を掴んで
彼女の細い脚が、そのか細さからは想像出来ない勢いで僕のお腹を蹴りつけた
「ぅぐッ…」
「地獄に堕ちろ。」
「!!!」
お腹に受けた衝撃で前のめりに倒れそうなった僕を、胸倉を掴んでいた戸田さんの手が突き飛ばす
そして僕はそのまま
階段に激しく体中を打ち付けながら、一階の踊場まで転げ落ちた