第38章 忘却の彼方に…、の巻
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神様
貴方は、何故…僕に奇跡を起こして下さったのですか
どうせ、取り上げてしまうおつもりだったのに
何故、僕に赤ちゃんを授けて下さったのですか
こんな残酷な奇跡なら
要らなかった
こんな悲しい想いをするのであれば
奇跡なんか起きなければ良かったのに
…要らない
こんな悲しい奇跡なんか……
……こんな、悲しい記憶なんか……
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全部
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……………………消えて、しまえ。
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僕と、翔くんの赤ちゃんが
確かに僕の中で生きていると言う確証を得た
記念すべきその日
僕は、天国から地獄に突き落とされた
その日、神様は
僕から、ご自身が与えて下さった奇跡を
呆気なく取り上げてしまった
僕は、薄れ行く意識の中
激痛に悶え、足元に流れ出す真っ赤な鮮血を
どうしようもない絶望感に満ちた気持ちで見詰めながら
こんな悲しい奇跡なんか消えてしまえと
そんな事を
ただひたすらに思っていた
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