第37章 嵐の到来、の巻
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「ありがとうニノ!」
「ま、愛しのにゃんこちゃんの為っすからね」
ニノは済ました顔でそう言うと、キッチンへ向かった
「あ、そんな訳なんで戸田さんはゆっくりされてて下さい
急なお願いでこんなトコまで泊まりで看護だなんて、お疲れでしょうし」
「…………そうですか、解りました」
戸田さんは少し間を空けてからそう言うと、インターフォンを指差した
「あのインターフォンで、部屋同士連絡が取れるそうです
私の部屋には内線3で繋がりますから、何かありましたら時間を問わずにご遠慮なくお呼び下さい」
「はい、解りました
ありがとう御座います」
「では、後ほど午後の検温の時に伺います」
戸田さんはそう言って一礼すると
一階にあるらしい自分の部屋へ向かった
「………ん〜………
良い人なんだろうけどなぁ」
「……しょぉ、くん……」
背筋を伸ばして足早に部屋へ戻って行く戸田さんの後ろ姿を見送って
再び訳の解らない違和感が浮上しかかった時
リビングの中から俺の名を呼ぶ小さな声が聞こえた
「智くん眼が覚めたの?」
俺は急いで声が聞こえたリビングに入り、智くんが寝ているベッドに駆け寄った
「智くん…」
「……んにゅ……しょ、ぉ…くん……」
「あ、……なんだ、寝言か(笑)///」
駆け寄ったベッドの中の愛しい人の顔を覗き込んだら、智くんはまだ眠っていて
ちょっと眉間しわを寄せて、寝言で俺を呼んでいる
俺は、ベッド脇にあった椅子を手繰り寄せてそれに座ると
智くんの手を握った
「俺はここに居るよ?
ずっと傍にいるからね……安心して」
「……んん〜………しょおくん、てば……ごはんは、ちゃんと……良くかんで、たべなきゃ、だめ………」(←しょーたんが飯をがっついている夢を見ている模様(笑))
「……………」(←嬉しいやら悲しいやら(笑))
ちょっと困った顔をしてむにゃむにゃ寝言を言う智くんを見ながら
たまには物を食って居ない時の俺の夢も見て欲しい
そんなアホな事を思う俺
だけど本当は
そんなバカな事を考えているよりも
自分が感じた違和感の正体を突き詰めるべきだったのだと
この時の俺は、全く気付けずにいた
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