第37章 嵐の到来、の巻
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まあ、なんせ特殊なケースだから
ちゃんと冷静に物事を割り切れる人の方が良いのかも知れない
だから、高島先生はこの看護士さんを選んだんだろう
(真面目そうだし、口も固そうだし
看護士さんには、智くんの体の事をキッチリ診てもらえれば良いんだし
心のメンテナンスは俺がみてあげれば良いんだから、きっとこんな人が適任なんだよな)
俺は何となく感じた違和感を払拭する様にそう思い直し、リビングの中を覗き込んだ
「で、どうなんですか智くんは?
ずっと寝てるって言ってましたけど、具合が悪いんですか?」
「いいえ、大丈夫ですよ
ずっとと言っても本当にずっと眠ってらっしゃる訳じゃないですし
妊娠初期は防衛本能と申しますか、身体を出来るだけ休ませようとして、眠くなってしまうものなんです」
「へぇ、そうなんだ…」
感心して頷く俺に、戸田さんが澄まし顔のまま言う
「ところで櫻井さんは、お食事はお済みですか?
二宮さんもまだお済みでらっしゃないですし、ご一緒されたら如何ですか?」
「え、ニノまだ飯食ってなかったのか?」
「食ってませんよ
なんせ可愛い俺のにゃんこちゃんが俺の姿が見えないと寂しがるんでね
にゃんこちゃんが何時目を覚ましても良いように、ずうっと傍で可愛い寝顔を鑑賞させて頂いてましたよ
俺は、誰かさんと違って食欲の抑制が出来るんで。」
「……俺だって、腹減ったの我慢して高速を飛ばして来たもん」(←笑)
「お二人でゆっくりお食事をなさっていらして下さい
大野さんも先ほどまで起きていらしたので、暫くは起きないでしょう」
何だか負けた気分(笑)になってふてくされる俺に
戸田さんがにっこりと微笑んでそう言った
「いえでも、俺もずっと智くんの傍に居たいからリビングで…って、あれ?ダイニングテーブルは何処行ったんだ??」
でっかいテーブルがあった筈の、がらんとした空間を二度見する俺
そんな俺に、ニノがニンマリと微笑みながら言った
「機材を入れるのに邪魔になるんで退かしちゃったんすよ
て言うか、俺がおにぎりか何か作って持って来てあげます
自分の分を作るついでに。」
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