第37章 嵐の到来、の巻
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「いゃあ〜、腹減ったわぁ
途中で飯食ったら遅くなっちゃうから休憩しないで来ちゃったもんなぁ…
あぁ〜、昼飯何食おう〜♪」(←笑)
超絶急いで来た為、昼飯休憩を取らずに高速を(安全運転で)爆走して来た俺は
早速昼飯の心配をしながら、別荘の玄関に立った
それから、ニノから借りた別荘の合い鍵を使って中に入る
「智くぅ〜ん
来たよ〜〜♡」
「ちょっと、うるさいっすよ(怒)」
愛しい妻の名を玄関先で呼ぶ俺に
智くんの可愛い声ではなく、ニノの渋い声が答えた
「ニノ?
もしかして智くん寝てんの?」
うるさいと怒られたので、小さめの声でそう言いながら靴を脱いでいると
ニノがリビングから顔を出した
「もしかしなくても寝てますよ
て言うか、寝てばっかっすからずっと」
「仕方が無いですよ」
智くんが寝てばかりだと肩を竦めながら言うニノの後ろから、女の人が顔を出してにこやかに微笑む
「あ、もしかして智くんの看護士さんですか?」
キッチリとした身なりのその人を見て、ああ、この人が看護士さんだなと思いそう問いかけると
その人はにこやかに微笑んだまま答えた
「はい、戸田と申します」
「戸田さんですか、僕は智くんの夫で、櫻井と申します
なんせ、特殊なケースですんで、色々大変だろうとは思いますけど
智くんのこと、宜しくお願いします」
「此方こそ、宜しくお願い申し上げます」
深々と頭を下げる俺に、丁寧に挨拶をしながらお辞儀をする戸田さん
なんだか、異様に人当たりが良い
(……人当たりが良いって言ったら聞こえが良いけど……なんて言うか他人行儀って言うか……
……ちょっと、冷たい?)
他人行儀って、まあ今日初めて会った他人なんだから、当たり前っちゃ当たり前だけど
どうも、事務的すぎると言うか、言葉に暖かみみたいなものを感じない
俺は、済ました笑顔を浮かべる戸田さんに、何だか良く解らない違和感を覚えた
(看護士さんってもっとこう、優しそうだって言うかフレンドリーって言うか…
…そんなイメージがあったんだけどなぁ)
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