第37章 嵐の到来、の巻
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これには流石に驚いたのか、高島先生が眼を見張る
それから、自分に張り付いた俺を引っ剥がすと、俺の顔を覗き込んで訊ねた
「何時から居ないのですか?」
「ぐすんっ……わ、解りません……俺、今起きたんで……昨夜寝るときには、ちゃんと居たんですけど…」
「……そうですか」
高島先生はそう言って難しい顔をすると、腕組みをした
「もしも夜中に外に出て行ったとしたら非常にまずいですな…
とりあえずは病院内を探してみましょう
後、念の為、近隣の病院に大野さんが運び込まれて居ないか確認しておきましょうか」
「は、はいっ!!」
それから
俺とナースのお姉さんとで、病院内をくまなく探し回るも見つからず
高島先生が近隣の病院に連絡を入れて確認したところ
何処の病院にも智くんらしき人は運び込まれていないとの事だった
「………智くん………何処、行っちゃったの………」
「櫻井さんは、一度自宅へ戻られた方が良いかも知れませんな」
散々あちこちを探し回って、結局智くんを見つける事が出来ずに
智くんの病室に戻って来た俺は、床にへたり込んで項垂れていた
そんな俺に、高島先生が一旦自宅へ戻れと言う
「もしかしたら、大野さんが自宅に戻られているかも知れませんし」
「……そう、……ですね……」
俺は、高島先生にそう言われるとヨレヨレと立ち上がって
そのままフラフラと病室のドアへ向かった
「櫻井さん、大丈夫ですかな?」
(大丈夫かだって?………だいじょばねぇよ…(泣))
と、思ったが
「……大丈夫です……大丈夫……だいじょぶぅ…(泣)」(←でも全然大丈夫そうには見えない)
「………(汗)」
高島先生はちょっと微妙な顔をして俺を見た後
仕切り直す様に軽く咳払いをして言った
「では、もし自宅に大野さんがいらっしゃいましたら、すぐに病院へお連れ下さい
大野さんは今、精神的にも肉体的にも、非常に不安定な状態ですからな」
「…………はい、解りました……(泣)」
俺は、やっとの事でそう返事をすると
ふらふらしながら病院を出て、もしかしたら智くんが戻っているかも知れない自宅へ向かう為に、タクシーに乗り込んだ
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