第37章 嵐の到来、の巻
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僕は、夢を見ていた
淡い光に包まれた、花が咲き乱れる草原に
一筋の小川が流れている
その、煌めく水面を
僕は、川の岸辺に立って眺めていた
『…まま…』
(……え?)
何処からともなく、可愛らしい幼子の声がする
『…まま…まま…』
(……誰?……何処に、いるの…?)
辺りをキョロキョロと見渡してみるものの
動くモノは眼下を流れる川の水だけで
さわさわと静かな水音だけが辺りに響いている
『…まま…ここだよ…ここにいるよ…』
(…何処?…ここって…何処…?)
耳からではなく、直接頭の中に聞こえるその声は
確かに僕に語り掛けている筈なのに
その姿は、一向に見える気配がない
僕は堪らなくなって、一方足を前に踏み出した
『…だめだよまま、こっちに来ちゃだめだよ
ぼくが、逢いに行くから…だから、待ってて
…きっと、きっと、逢えるから…
…待ってね、まま…』
(!!……待って!!///)
頭の中に響いていた声が遠ざかって行く気配がして
僕は焦ってにその声に問い掛けた
(君は…君は、僕の赤ちゃんなの?
僕と翔くんの……)
『…さよなら、まま
さよならだよ
また、いつか必ず逢おうね?』
(………!!!!)
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「まっ…て…!!///」
「ん……智くん、気が付いたの?」
夢の欠片を追い掛けて伸ばした手を
隣で寝ていた貴方の手が柔らかく握り締める
僕が、まだぼんやりと霞んでいる眼を瞬きして僕の手を握った貴方の方へ向けると
貴方が…
…翔くんが、優しくにっこりと笑った
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