第36章 奇跡の予兆、の巻
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(……どうしよう……凄くどきどきして来ちゃった///)
僕は、主治医の高島先生に言われるままにベッドへ戻ると
どうしようもなく早くなった鼓動を抑える様に胸に手を置いた
そんな僕の様子に気付いた翔くんが、優しく僕の背中を撫でて、心配そうに僕の顔を覗き込む
「智くん、大丈夫?
気分悪いの?」
「ん〜ん……大丈夫だよ///」
「本当?」
「うん///」
返事をしながら、ふと思う
(そう言う翔くんは、大丈夫なのかな?)
僕は、心配そうな翔くんの顔を見ながら、さっき翔くんが僕が居る病室に運ばれて来た時の事を思い出した
(ニノと村上さんが気絶してる翔くんを運んで来た時は、本当にびっくりしたけど///)
ニノが言うには
電話で僕がもしかしたら妊娠しちゃったかも知れないって話しを聞いた翔くんが、電話しながら気絶しちゃったらしく
その翔くんを迎えに翔くんの会社へ行ったところ、翔くんはまだ気絶中で
で
ニノが叩き起こしたのだそうなのだけれど
気が付いたと思ったら、僕の妊娠の話しを思い出して、再び気絶してしまったらしい(苦笑)
それで仕方なく、村上さんに手伝ってもらって翔くんをココまで運んで来てくれた
と、言うわけだ
(けど……どんな状態でも、翔くんが傍に居てくれると、安心する///)
それまで、独りで病室に居た時は、泣きたいくらい不安だったけど
翔くんの顔を見たら、なんだか気持ちが落ち着いて、凄く安心した
そんな僕の様子を見て、ニノは
「その内嫌でも目が覚めるでしょう。
まあ、頼り無いっちゃ頼り無いけど、後はその気絶してるヘタレに任せて俺は帰りますね」
と言って「ところで智くんはドコが悪いねん!」とか言っている村上さんを引っ張って帰って行ったのだった
「……お話しをさせて頂いても、大丈夫ですかな?」
しばらく黙って、翔くんに背中を撫でられている僕の様子を見ていた高島先生が
後ろに腕を組んで僕と翔くんの顔を交互に見て言った
「智くん、大丈夫?
話し、聞ける?」
先生に訪ねられて、翔くんが優しい声で僕に訊く
僕は、無言でゆっくりと頷いてみせた
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