第36章 奇跡の予兆、の巻
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「ぶっちょー!!マジ来てるって台風!!
今夜遅くに関東に上陸の恐れがあるとか言ってますよ!!
落ち着いて仕事なんか出来ませんて!!」
俺は、オフィスの応接室に置かれたテレビで流れているニュース速報を指差しながら叫んだ
「だからもう、帰りましょうッ!!!」
その日は、折からの台風の接近で、朝から天気が荒れていた
そんな嵐の日に、愛しい妻を家に1人で残すなんて心配極まりないし
それに加えて、智くんがココ数日体調不良を訴えていた事も相俟って
俺は何時も以上に、早く仕事を切り上げて帰りたくて仕方なかったのだった
……が。
「あほか!後一時間足らずなんだから、きっちり時間まで働け!!(怒)」
…悉く部長に却下されていた。(←当たり前だから)
「だって、ぶっちょー!!(泣)」
「やかましいッ(怒)」
「ぶっちょぉお〜〜ん(泣)」
泣きながら(笑)ぶっちょの腕に縋るも、敢えなく振り解かれる
んで
ヘタレて床にしゃがみ込んだ所で、懐の携帯電話が鳴り出した
「帰りたいよぅ………って、あれ?ニノだ」
てっきり、台風情報を見た智くんが心配して電話して来てくれたんだと思ったら
着信はニノからのものだった
こんな時間に俺に何の用だろうかと不思議に思いながら電話に出る
「もしもしニノ?どうしたんだ?」
『……………落ち着いて聞いて下さいね』
「は?
落ち着けって……何だよいきなり?(汗)」
電話に出るなり、いきなり“落ち着いて聞け”なんて低い声で言われて
激しく嫌な予感がする
ニノは、そんな警戒しまくった俺に、ゆっくりとした口調で
一語一語を選ぶように言った
『……本来なら、俺の口から、電話なんかで伝える様な事じゃ、無いんですが
此方に来てから、パニクられては困るので、言いますが……
……今、大野くんと、病院に居るんです』
「Σびょ、病院っ!?(汗)」
『だから、落ち着いて聞いて下さい。
貴方にパニクられると、大変困るんです』
「な、な、な、……何だよ、どう言う事だよ!?
ささささ智くんに何かあったのか!!?(汗)(汗)」
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