第36章 奇跡の予兆、の巻
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昔
小さい頃
俺は
赤ちゃんは、コウノトリが運んで来るんだと信じていた
だから、母のお腹に妹が出来たとき
俺は、どうやってコウノトリはお母さんのお腹の中に赤ちゃんを入れたのだろうかと思い悩み
挙げ句、あらぬ妄想をし
吐き気を及ぼした事を覚えている
あれから
三十年近くが過ぎて、31歳になった俺は
赤ちゃんは、コウノトリが運んで来たりなんかしない事なんて、当然ながら知っていたし
正しい製造方法(笑)も何もかも知っているつもいでいた
だがしかし
幼い俺が信じ込んでいた様な
非現実的な事でも起きたと思わなければ、信じ難い出来事と言うものも、この世には存在している訳で…
…それを
その、言うなればコウノトリ的な発想でなければ、どうにも理解出来ない様な出来事が、自分の身近で起きるなんて…
「台風だから就業時間を繰り上げて昼までにしましょう!!」
とか無茶を言って、部長に怒られていたその時には
全く想像すらしても居なかった
だが、その数時間後
急に速度を上げて本州に接近し始めた嵐の到来と共に
俺は、非現実的な出来事が、愛しい智くんの身の上に起きた事を知らされたのであった…
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