第36章 奇跡の予兆、の巻
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「………あっ。」
それからしばらくして
黙って父子を見ながら、俺の肩に甘える様に寄り添っていた智くんが
小さく声を上げて体を起こした
見れば、お父さんが男の子の脇を抱えて高い高いしている
「……………」
声にこそ出してはいないけど
その様子を眺める智くんの顔には「いいな、僕もして欲しいな」って書いてあるみたいだった
だって智くんは
…父親と暮らしたコトが無かったから
だから父親とあんな風に遊んでもらうことも
ましてや
『高い高い』なんて、してもらったコトは一度も無かった筈だから…
「……………智くん」
俺はベンチから立ち上がると
智くんに向かって手を広げた
「ん?……なに?」
「おいで智くん
高い高いしてあげるから!」
「え………えっ!?
い、いいよ恥ずかしいから///」
「遠慮しないで、ほらっ!!」
「きゃっ////」
俺は恥ずかしがって遠慮する智くんの脇の下に手を突っ込んで
ガバッと持ち上げた
「ほぅら智くん!
高い高い!!」
「きゃーっ////」
「たかぁ〜い、たかいっ!!」
「やぁもう……んふふっ////」
「ははは」
「うふふ///」
「あははは(笑)」
「うふふふ(笑)」
毎日(メタボ予防のため)筋トレしている俺も
いくら華奢だと言えど、成人男性である智くんを高い高いするのはキツかったけど
智くんが、あんまり可愛く楽しそうに笑うから
俺は夢中になって智くんを高い高いし続けた
「あはははは……は〜っ!!もう腕が限界っ!!!(笑)」(←でももう無理らしい(笑))
「うふふふふ、大丈夫翔くん?///」
「大丈夫だぁ♪」
「うふふふふ////」
気付けば
さっきの砂場の父子の姿はもう見えなかった
もうじき夕飯の時間だから、きっと母親が待つ自宅に帰ったのだろう
「ああ〜、力使ったから腹減った!!」
「んふふ、じゃあちょっと早いけどもう相葉ちゃんトコ行く?」
「行く〜!!」
「うふふふふ////」
それから俺たちは、相葉くんのBARへ向かった
途中
「アレ、結構な運動になるから、毎日の筋トレに取り入れよう!」
なんて話しをしながら、ね(笑)
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