第36章 奇跡の予兆、の巻
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松本くんのお宅に泊まりで遊びに行ってから
一週間ほどが経った
あれから、松本くんから数回連絡があって
どうせだから庭の一部を改装してラジコンヘリサーキット造ろうと思っているんだなんて、セレブならでわの話しに驚きながらも
サーキットが出来たらまた遊びに行くコトを約束したり
その前に一度ゆっくり飲もうとか
なんだか普通の友達みたいなやり取りをした
智くんは、その松本くんからの電話に時々代わって出て
「僕も一緒にレース出来る様に、もう一体ラジコンヘリ買うんだよ」
とか
「飲みに行くなら僕も一緒に連れて行ってね」
とか
楽しそうに松本くんとお喋りをしていた
そんな風に一週間が過ぎて、またお休みの土曜日の今日
俺と智くんは、何時も通り何時もの公園へ来ていた
「あ、珍しいな」
公園の何時ものベンチに、二人仲良く並んで座ってノンビリしていたら
智くんが公園の中央の砂場で遊んでいる親子連れを見て呟いた
「珍しいって、何が?」
「うん……ほら、あそこ
あの親子、お父さんと子供の二人で来てる」
智くんが指差した方を見ると
確かに、砂場の端っこでお父さんと小さい男の子が遊んでいるのが見えた
「本当だ。
でも、あっちで話してるお母さん軍団の中にあの子のお母さんが居るのかもよ?」(←お母さん軍団て(笑))
「居ないよ。
さっきからお母さんの中の誰もあの子の方には眼を向けてないもの」
「そうなの?」
「そうなの。」
智くんは、目線を砂場で戯れる父子の方へ向けたままで、ゆっくりと頷いた
「……………いいな///」
視線を父子に向けたままで、智くんがぽつりと呟く
うるうると揺れる瞳に、ハッキリと羨望の色が見て取れた
「…………」
俺は黙ったまま
羨ましそうに砂場で戯れる父と子を見詰める智くんの細い肩を
そっと抱き寄せた
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