第35章 夢のあとのその先(後編)、の巻
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「智くん、楽しかった?」
松本邸から帰宅した後
夕飯のお買い物に行くから、翔くんはお留守番しててと言う智くんに無理やり同行して、夕飯のお買い物をしながら
俺は、智くんにそう訊ねた
「うん、楽しかったよ
翔くんは?」
秋鮭の切り身を物色しながら、智くんが言う
俺は、その手元を覗き込みながら言った
「俺も楽しかったよ
案外松本くんとも話が弾んだしさ
……あ、俺腹身食いたい」
「塩焼き?」
「うん、塩焼き♪」
「んふふ、良いよ♡」
クスクス笑いながら、鮭の腹身をカゴに入れる智くんが
ふと真顔になる
「………ね、僕がお買い物行ってる間……何の話ししてたの?」
智くんは、カートを押す俺の腕に寄りかかる様に腕を絡めると
上目遣いに俺を見上げた
「ん〜?……ラジコンヘリの話し(笑)」
「それだけ?
潤くんに話したいコトがあるんだって言ってたでしょ?
それってその話しなの?」
「ははは、勿論違うよ(笑)」
「じゃあ、何の話し?」
「……うん」
話しているドサクサに紛れて、お菓子売場でカゴに入れようとしていた、期間限定新発売(笑)のポ◯キーを
智くんに手から奪われて棚に戻されながら
俺は、自分の腕に絡み付いた智くんのキレイな手を握った
「……智くんがね、時々見る……夢の話し」
「………………え?」
智くんの涙目が大きく見開かれて
俺を見上げる
俺はちょっと戸惑った様な顔をした愛しい妻に微笑みながら言った
「最近、あんまり見なくなったんですよ、ってさ
そんな話しをしたんだよ」
「……良く見る夢を、最近見なくなったって、言っただけ?
……夢の内容は……言わなかったの?」
「勿論言ったよ」
「……………」
智くんの顔が
戸惑いの表情から、不安気な表情に変わる
俺は笑顔のままで、その頬を片手で包んだ
「………そんな風にね……夢でまで追い続ける程に松本くんを愛してる智くんの…
…その想いごと、俺は智くんを愛してるんですよ、って
そんな話をしたんだよ」
「…………………翔くん///」
「松本くんね、ソレを聞いて……俺で良かったって、言ってくれたよ?」
「…………………うん///」
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