第35章 夢のあとのその先(後編)、の巻
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「…………」
俺は、手を膝の上で組んで前屈みになった
そして俺は
智くんが、松本くんへ抱いている想いを
俺が、智くんに寄せて注ぐ愛を…その想いを
静かに、話し始めた
「…本当に好きだったんだろうなって思いますよ…
“潤くん行かないで”って言いながら泣くんです…
…俺は聞いてないフリしてますけど…
…本当に、聞いてる方が切なくなる様な声で…
…泣くんです」
「智が…」
松本くんの瞳が、困惑にゆらゆらと揺れる
いつ見ても凛として男前なその表情に
不安が色濃く浮かぶ
「…そう…ですか」
何とも言えない表情で、溜め息混じりに呟く松本くん
俺は、そんな松本くんから視線をそらし、高級そうなラグに視線を落として
また話し始めた
「ええ……今でも時々…
きっと貴方の事、今でも愛してるんだと思います…
…カタチが違ってしまっても…
…ずっと続いてく想いってあるんだと思います」
(そうだよね、智くん
君は今でも松本くんを愛している
だけど
それは、以前とは違う想いに変わったんだよね?
愛する気持ちは変わらなくても
その形が変わったんだ
愛から…友情に…)
俺は、智くんの穏やかな笑顔を思い浮かべて
ゆっくりと眼を閉じた
「……貴方との事があったから、今の智くんが居るんだって
俺は思うんです」
「…え?」
智くんが
智くんであるために
乗り越えてきた
様々な悲しみを
それを
俺は…
(…………それごと、丸々愛してる)
そう
智くんの過去も
智くんの悲しみも
全部ひっくるめて
俺は、今の智くんを愛してるんだ
そう、思ったら
自然と、笑みがこぼれた
「切ないくらいに貴方の事愛してたから…
…哀しいくらい貴方の事愛してるから
今の智くんになった…
…そんな智くんの想いごと、俺は智くんを愛してるんです」
「…櫻井くん」
笑いながら智くんへの想いを語る俺を
松本くんは、ただ
切なそうに、見つめた
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