第34章 夢のあとのその先(中編)、の巻
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買い出しへ出掛けてから、一時間余りが過ぎた
でも
僕らは買い物へは行かないで、近所のスーパーではなく公園のベンチに並んで座っていた
そうしてしばらくの間、当たり障りのない世間話をしていたのだけれど
ちょっとした沈黙の後、潤くんが言った
「いいかげん帰らないと、今頃櫻井くんが崩壊してんじゃないか?」(←してますよ。(笑))
「ん〜…まだいいんじゃない?」(←え?良いの?)
のんびりした口調でそう答える僕の顔を、潤くんが伺い見る
「……今日はおかしいぞ?どうしたんだ、智」
(……おかしい、か。)
多分
昔とはちょっと違う僕は、潤くんの目に「ちょっと何時もと違う」様に見えるのだろう
だけど
潤くんが感じているその違和感は、今日の僕が何時もと違うのではなく
…今の僕が昔と違うことを意味していた
「………昔話しようよ」
僕は、徐にそう言った
あの頃の僕と、今の僕は違うんだって
潤くんが愛した籠の鳥は、もう、居ないんだって
翔くんと出逢って、愛し合って、ずっと寄り添い生きていくコトを決めて
僕は、変わったんだって
……それを、伝えたくて……
「…昔話?」
潤くんが、ちょっと目を見開いて聞き返す
僕は、おどけた感じで笑いながら言った
「ふふ…そう、嫉妬深い王様と臆病な囚われの姫の話し」
「囚われの姫ね…あんな淫乱な姫がいるもんかね?」
僕の例えに、潤くんが悪い顔をして意地悪く返す
「いっ!!/////ひどいよっ!!!」
僕は、“淫乱”だなんて言われてかあっと熱くなった頬を膨らまして怒った顔をした
…でも。
(そう、解ってる……おかしかったのは今じゃなく、あの頃の僕なんだ……)
僕は、そんなコトを思いながら、潤くんの肩にそっと寄り添った
「……ずっと一人で寂しかったんだモン」
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