第34章 夢のあとのその先(中編)、の巻
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「…そうだね」
(……そうだね、潤くん
潤くんは案外心配性で、ヤキモチ妬きだもんね
…そんなトコは、翔くんと同じだね)
「………」
「………」
それから、会話はそれで途絶えてしまって
僕らは黙って街をぶらぶら歩いた
何処の店へ行くとか、何を買うとか
そんなコトは一切何も言わずに
…ただ、街路を手を繋ぎ、ゆっくり無言のまま歩いて行く
それは、あの頃と同じようで……同じじゃない
僕にはそれが……その沈黙の中にあるものが
あの頃の僕らにあった、会話が無くても伝わるお互いの気持ちではなく
過去ときちんと向き合えない、僕と潤くんの心の溝の様に思えてならなかった
(…………言わなくちゃ、ちゃんと
もう、忘れてって………2人であの事を、過去の出来事にしてしまおうって……)
僕は、意を決して
何処へ行くわけでもなく歩いていた脚を止めた
「…………」
「…どうした?」
急に立ち止まった僕を、僕より二歩前に出た潤くんが、振り向いて僕を見る
僕は、少し俯いた顔を上げて
じっと、潤くんを見詰めた
「…潤くんが悪いんじゃないよ?」
「……え?」
「潤くんは僕を助けようとしてくれただけ…
…ちっとも悪くないんだよ…
…だからそんなに自分を責めるのは…
………もうやめて」
「………!!」
潤くんの大きな眼が、驚きでまた見開かれる
それから僕をじっと見詰めた後
辛そうに顔を歪め、小さな声で呟いた
「…………違う」
「…潤くん?」
「…俺は…あの時…」
何が違うんだろうと、自分の顔を覗き込む僕を見て
凄く哀しそうに…辛そうに笑うと
潤くんは、言いかけた言葉を引っ込めた
「…何でもないよ…大体よく覚えてないんだあの時の事」
そう言って笑う潤くんは
やっぱり
凄く辛そうだった
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