第34章 夢のあとのその先(中編)、の巻
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車を出そうかって言う潤くんに、歩いて行くコトを提案した僕は
潤くんの大きな自宅を後にして、静かな住宅街を歩いていた
「荷物が多くなると運ぶの面倒だぜ?」
僕と並んで、ぶらぶらと歩きながら潤くんが言う
僕は、それに笑って答えた
「そしたら翔くん呼ぶから(笑)」
「…足扱いなの?お前の彼氏」
「ふふ…」
(……あぁ、何時ぐらいぶりかなぁ……
……こんな風に、潤くんと歩くの……)
昔
潤くんがまだ、僕だけのものだった頃
こうしてよく二人で家の近所を散歩したコトを思い出す
(……あの頃は……本当に、ただ単純に幸せだった……)
「…一緒にお散歩するの、好きだった」
ぶらぶら歩きながら、僕がぽつりとそう呟くと
潤くんが僕の方を見て、微かに微笑んだ
「…俺も、好きだったよ」
それは、本当に優しい微笑みだった
穏やかで落ち着いた…あの頃の潤くんを思わせる様な微笑み
(……その笑顔も……好きだったな)
潤くんの笑顔に釣られて微笑みながら、そんなコトを思う
(好き…………だった、か。)
自分自身の心の呟きに
やっぱり、潤くんに対する僕の想いは、もう過去のモノなんだと改めて思う
と
そんなコトを思っていた僕の手を、潤くんが急にキュッと握った
「っ…////」
びっくりして潤くんを見たら
なんだか、悪戯をしたあと怒られるんじゃないかってソワソワしてる子供みたいな顔をしていて
思わず笑みが漏れる
(……翔くん……ごめんね?(笑))
僕は心の中で翔くんに謝ると、そっと潤くんの手を握り返した
「翔くんには内緒だよ?結構ヤキモチ妬きだから」
ちょっとおどけてそう言う僕を見て、潤くんはニマって笑うと
少し切なそうな顔をして言った
「…俺と一緒だな」
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