第33章 夢のあとのその先(前編)、の巻
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だけど
そんなコトは望んではならないことだと思った
…僕は、汚れている
あの悪夢で、穢れてしまった
それに、散々お世話になったのに、お礼も言わずに黙って去ってしまった教授に申し訳が立たない
そうも思った僕は
逢いたい気持ちを胸に秘めたままで、誰にも連絡を取ることはしなかった
誰にも…ニノにすら連絡を取らなかったのは
居場所を告げてしまったら、きっと潤くんにも知られてしまうと思ったからだ
そしてきっと潤くんは、僕の居場所を知ったらスグに僕を迎えに来るだろう
だけど…
…彼に逢ってしまったら、きっともう、自分の気持ちを抑えきるコトなんか出来ない
教授のコトも何もかも忘れて、彼を求めてしまうに違いない
…僕は、それが怖くて
親友であるニノにも、連絡をせずにいたのだった
それからしばらくして
貯金が底を突いてから
僕は、バイトを始めた
とは言え
僕に出来るバイトなんてそんなに沢山の選択肢なんかなく
昼間は近くの公園で、絵を描きながらそれまで描きためた絵を売って
夕方から夜までは道端に立って、工事の交通整理の仕事とかをして
夜から明け方まではコンビニでバイトしてなんとか生計を立てていた
ただ生活するだけだったら、そんなに働く必要は無かったかも知れないけど
兎に角絵だけは辞めたくなかったから
画材を購入する為に、僕は昼夜を問わず働いた
そして
くたくたになってぼろアパートに戻って
泥のようになって眠る
…そんな毎日を過ごしていた
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