第33章 夢のあとのその先(前編)、の巻
.
そうして僕は、適当に電車に乗って
でたらめに決めた駅で降りた
何処か遠くの田舎へ行くコトも考えたけど
都内の方が仕事を探すのにも苦労しないだろうし、他人のことを気にかける人も少ないだろうと思い
結局、都内を出ることはせずに
さほど遠くへは行かなかった
そうやって、適当に決めた土地で
僕は、安いアパートを探した
どうしても他人と一緒にお風呂に入りたくなかった僕は
是が非でも風呂付きの物件にしたかったのだが
なんとか、激安で風呂付きの物件を見つける事が出来た
それはまるで、古い映画にでも出て来そうな異様に年期が掛かった建物で
築年数は、自分の歳を遥かに超えていたし
外観も部屋の中もボロボロな四畳半のぼろアパートだった
だけど
古いだけあって、逆に間取りは広く
四畳半と言っても言うほど狭くはなかったし
元々荷物を殆ど何も持って来なかった僕には、十分な広さだった
住む場所が決まった後、僕はすぐに画材を買いに行った
あの夜のバイトのお陰で、貯金はそこそこあったから、それでアパートの頭金とか敷金とかを払った訳なんだけど
何処に居ても……大学を中退してしまっても
兎に角、絵を描くことだけは辞めたく無かったから
だから僕は、貴重な貯金を削ってでも、まず先に画材を揃えたのだ
.