第33章 夢のあとのその先(前編)、の巻
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「えへへ……まぁじっすかぁ?///」
泣きながらそう言う僕に、翔くんがちょっとふざけた様に返して言う
僕は、そんな翔くんに合わせて、同じ様にちょっとふざけて応えた
「マジっすよぉ〜?……んふふ…重くて引いた?」
「ぜぇ〜〜んぜん?
だって俺の智くんへの愛の方が重たくて面倒くせぇもん♡」
「えぇ〜?僕のが重たぃもぉ〜ん!」
「いーや、俺でしょう!」
「いやぁん、僕ぅ!!」
「やだぁん、俺ぇ!!」
「あぁんもぅ、僕だったらぁ♡」
「ばかんもぅ、俺だってばぁ♡」
「いにゃあぁん、もぅ……」
………って。
結局、何時ものやつになってしまう僕ら(笑)
……でも……
(それが、僕らの愛のカタチだもんね?
だから…僕らは、コレで良いんだよね?
……ね、翔くん……)
僕は、そんなコトを思いながら
何時もの翔くんとの掛け合いを思う存分楽しんだ
それから
僕らは一頻り例のヤツを楽しんだ後
仲良く手を繋いだままリビングのソファーに座って、就寝までのノンビリとした一時を過ごした
僕は、僕の隣で晩酌しながらテレビを見ている翔くんに気付かれない様に
こっそりと、またあの傷痕に手を置いて
その、何時までも消えない傷痕を、シャツの上から指で辿った
(……あれから……もう、何年経つだろう……)
大怪我で入院していた病院を出た後
僕は、誰も知る人が居ない土地に、誰にも何も告げずに移り住んで暮らしていた
その時のコトを、傷痕を辿りながら思い出す
(…………あの頃は………こんな日が……こんな穏やかな日々が僕に訪れる時が来るなんて、思ってもみなかった……
……誰も知っている人が居ない街で、ただ生きる為に絵を描いて、働いて……
………そのまま、人知れず老いて死ぬだけだって、そんなコト思ってた………)
それは
記憶の中に埋もれさせて、いっそ消してしまいたい様な…
…思い出すだけで、憂鬱な気持ちになるような、
そんな
暗く辛いだけの日々だった
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