第32章 迷惑な新人くん、の巻
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(翔くんのバカ翔くんのバカ翔くんのバカ翔くんのバカ…)
電話で、“浮気してる”なんて言われて
そんな事絶対無いとは思うけど、でも……って、ちょっと不安だった
(翔くんなんかキライ翔くんなんかキライ翔くんなんか大っキライ…)
そんで、電話が通じなくて
若い男の子なんて……多分、そんなのには免疫も無くて全く警戒もしてないだろう翔くんが……心配で
もし、万が一……翔くんにその気が無くたって、向こうにその気があったら……って
嫌な予感がしてならなかった
………そしたら………
「〜〜〜〜っ………ばかっ!!!////」
僕は、デタラメに歩いていた脚を止めると、公道に居るにもかかわらず大声で叫んだ
道行く人が、驚いて僕を見てたけど
そんなのもう、どうだって良かった
僕の脳裏には、さっき見た翔くんと若い男の子とのキスシーンが繰り返し浮かんでは消えていて
その合間に、昨夜翔くんが言った
「可愛い子が目の前に居たら仕方ない
俺は男なんだから」
ってセリフが繰り返し流れていた
(…………可愛い、子だった////)
若くて、ぴちぴちで、可愛い…ちょっと、タイプが僕に似た感じの男の子
…って事は、翔くんの好みの男の子なんじゃないのか
だとしたら、僕なんかより……若くてぴちぴちな方が、良いに決まってる
「…………ぅ……ふえっ………ふえぇっ……/////」
翔くんが浮気なんて有り得ない
そう、信じたいけど…
翔くんは、男の人を、僕しか知らない
…だから、もしかしたら…違う男の子と、ちょっとだけ、なんて……思ったりすることは
無いって、言い切れないんじゃないのか…
そんな事を思って、涙が溢れては頬を濡らした
「……翔くん、の……ばかぁ……ふぇっ……………翔くん……………翔くぅん/////」
「………………………ぁ〜〜としくぅうう〜〜〜〜〜〜んっ!!!!」
「…え?////」
道の真ん中で立ち尽くして、翔くんの名前を呼びながら情けなく泣いていたら
その、愛しい人の叫び声が聞こえた
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