第29章 悪夢の再来、の巻
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「……そうですか」
「俺も……深追いしてヤツを追及した所で、自分にもとばっちりが来るかも知れない話しだったから
その時はそれで諦めたんだが…」
ソコまで話すと
松本くんは、濃いぃ顔を渋く曇らせて大きく息を吐き、黙り込んでしまった
「諦めたんだが、どうしたんですか?」
俺以上に興味津々と言った感じのニノが、黙っている松本くんに詰め寄る
松本くんはニノの方を見ると、またため息を付いて続けて言った
「確証がある訳では無いんだ」
男前な顔を、若干弱気に曇らせて、松本くんが話しの続きを語り出す
「…だから、あいつにしたら思い出したくないだろう事を、わざわざ掘り返すのが忍びないから…黙って居ようかと思ったんだが…」
「なんなんすか、潤くんのクセに回りくどい!
クドいのは顔だけにして下さいよ!」
「………あのな。(怒)」
松本くんはニノの失礼な物言いにムッとしつつも、話を続けた
「……つい最近、例のストーカーを見掛けた気がしたんだよ」
「見掛けた……気がした?」
「ああ」
松本くんは深いため息を付くと、背もたれに背中を預けて椅子に沈み込んだ
「……姿形は、まるで別人なんだが……雰囲気と言うか……いや、雰囲気も変わってたんだけど……
……眼が……あの時見たあの男のものと同じ様な気がして……」
「それは……何時の話しですか?」
「君が俺と智が浮気してると勘違いした例のあの時さ(笑)」
「あ〜……(汗)」
そう言えば、松本くんと会うのはアレ以来だったなぁ、なんて思っていたら
松本くんが真剣な顔つきでまた話し始めた
「櫻井くんが、智の後を追って行った後、物影からその男が現れて……俺を見て、怯えた様な眼をしたんだ」
「そりゃ、潤くんの顔が鬼瓦みたいになってたからじゃないっすか?
ほら、大野くんとの浮気がバレた直後だったから」
「……してねぇっつうの。(怒)」
一々チャチャを入れるニノを一睨みして、松本くんがまたリザーブを飲む
「アレですか?やっぱり十年位経ってるから、人相が変わってて確証が無いって事ですか?」
「いや………アレがあのストーカーだったとしたら………恐らくは、整形か何かをしたんだと思うな」
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