第29章 悪夢の再来、の巻
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「…素性は、お調べになったんですか?」
「ええ、勿論
彼はあれで勤勉な男でしてね、会社勤めをしながら美術の専門学校に通って勉強したようですよ
お陰で、只でさえ婿養子なのに奥さんに頭が上がらないって言っておりましたが(笑)」
「Σ奥さん!?
あの人結婚してるんすかっ!?」
「はははは、そんなに驚く事ですか?(笑)
いや、でも…結婚してからまだ間もないそうなので、晩婚は晩婚ですがな」
「…………はぁ(汗)」
おっさんが妻帯者であった事に驚く俺
佐藤さんはそんな俺を見て笑いながら、更に話を続けた
「大野さんの事も、程なく見つけてくれましてね
いや、なかなかの目利きですし、アレで有能な男なのですよ?」
「………そうだったんですか」
「そうだったんです(笑)」
満足そうに笑う佐藤さん
でも俺は、やっぱり何となく納得がいかないと言うか…
…何だか解らない違和感を覚えていた
(…………う〜ん、どうにも胸騒ぎが収まらん(汗))
俺は、胸騒ぎの原因がはっきりと解らないまま
これ以上遅くなると、またぶっちょにハゲしく怒られてしまうので
佐藤さんにお礼を言って、仕方無く受け取った原稿を手に、佐藤さんの事務所を出た
(………だいたいさ、あいつはどうやって智くんを捜しあてたんだろう?)
智くんには、親戚らしい親戚は居ない
路上で絵を売って居た頃は、それとアルバイトで生計を立てて居たのだから、当然、決まった職に就いていた訳ではない
しかも、その後
松本くんのマンションで暮らすようになってからは、智くんが他人と接触することを松本くんが極端に嫌った為
ほぼ人付き合いが皆無だった
…それを、一体どうやって辿って智くんを見つけ出したと言うんだろうか?
「ん〜〜………………やっぱ、胡散臭い(汗)」
俺は、会社へ戻る道すがら
もしかしたら、松本くんなら何か心当たりがあるかも知れないな、なんて
ぼんやりと考えていた
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