第29章 悪夢の再来、の巻
.
「はぁ………あ、高橋さんゴメンナサイ、翔くん…いえ、櫻井が失礼なことばかり言って///」
「いやいやいや、愛されている証拠ってやつですな!」
「えっ?………………………はぃ/////」(←笑)
何だか、こんな風に僕らの関係を自然に受け入れて貰えるコトが嬉しくて
つい、顔が緩んでしまう
そんな僕の顔をニコニコしながら覗き込んだ後
高橋さんは
「何かご用がありましたら、内線をお使い下さい」
と言って、ギャラリーに戻って行った
(……確かに、ちょっといやらしい目つきをするコトはあるけど……
……別に、悪そうな人じゃないのになぁ)←いやらしい目つきで見られ慣れているので、ソコに違和感を余り感じないらしい
僕は、翔くんは何であんなに高橋さんを毛嫌いするんだろう、とか思いながら
高橋さんが去って行った廊下を、しばらくぼんやり眺めてから
アトリエの中に入った
「…こんなことする必要ないと思うのになぁ」
ぶつぶつと独り言を呟きながら、扉に内側から鍵を掛けると
ガチャリと、鍵がかかる音が静かなアトリエに響いた
(…でもまあ、翔くんが安心してくれるなら別に何だってするけどさ///)
どんな馬鹿げたことだって、翔くんの為だと思えば、億劫なことなんか何もない
なんて思いつつ
鍵がちゃんと閉まっているのをドアを引いて確認して、イーゼルの前に立つ
ソコには、事前に持ち込んでいた、教授のお家で描いていた描きかけの絵が置かれていた
「……よし、先ずはコレを仕上げるのから始めようっと」
一つ大きく息を吐いて、イーゼルの前に置かれた椅子に腰掛ける
防音された部屋の、心地よい静寂の中で、気持ちを集中させる
(………うん、いい感じ///)
僕は、真新しい筆の先を指で解しながら
ただ絵を描くことだけに集中出来ると言う、久々の感覚に
ちょっと、ワクワクしていた
.