第28章 智、画家になる!?、の巻
.
「いや、どうもお待たせ致しました
初めまして、私、佐藤と申します」
「いえ、此方こそお忙しい所お時間を頂きまして恐縮です
櫻井です」
「貴方が櫻井さんですか、高橋から話は聞いております
私からお願いした案件なのですから、時間を取るのは当然の事ですよ
…ああ、お掛けになって下さい」
佐藤さんは交換した名刺をテーブルにキチッと置くと
にこやかに笑いながら、俺と智くんに椅子を進めた
ギャラリーでエロオヤジのいやらしい視線から智くんをガードしつつ、絵を鑑賞しながら佐藤さんを待つこと暫し
エロオヤジが電話を入れてから、きっかり一時間ほどで佐藤さんがギャラリーへやってきた
それにしても間近で見る佐藤さんは
ここの責任者のエロオヤジ…いや、高橋さんとは正反対の、キリッとした渋いイケメンだ
(ちぇ……智くんが赤くなる訳だよな)
最近になって俺は、智くんが渋いイケメンのナイスミドルに弱い事に気が付いていた
だいたい、初めて真剣にお付き合いしたと言う教授にしたってそうだし
松本くんは間違いなく数十年後は超絶イケてる渋いナイスミドルになっている事だろう
(俺なんて、いくら年を取っても渋くなんかならねぇもんな…多分)
「…………はあ」
智くんの画家になる話とは全く別のこと(笑)で思い悩み、思わずため息が漏れる
すると、そのため息を聞きつけた智くんが、心配そうに小首を傾げながら俺を顔を伺い見た
「翔くん、どしたの?…大丈夫?」
「いや、ごめん……何でもないよ(汗)」
「不躾な事をお訊き致しますが
櫻井さんが、先日大野さんが仰っていた、同居なさっている大野さんのパートナーなのですか?」
「ほえ?」
「ええ、そうです」
何の事だと間抜けな声を上げる俺の隣で
智くんが超絶可愛く微笑みながら返事をした
.