第28章 智、画家になる!?、の巻
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「……智くん、今頃お茶会行ってる時間だなぁ」
仕事が一段落して伸びをしながら時計を見た俺は
肩をコキコキ鳴らして呟いた
「何や櫻井くん、相変わらず頭んなか嫁の事ばっかやな!」
俺の呟きを聞きつけた村上が、にやにやしながら俺のわき腹をつついた
「止めろや!てか、当たり前だろ!俺の頭の中のゲージは常に智くんで埋め尽くされている!」
「あははは、じゃあアレや!脳内なんちゃらやりよったら、“智”って文字一色やな!(笑)」
「まあな、当然そうなるだろうな!」
若干、“H”とかいう文字も入るかも知れないが、それも智くん絡みだもんな
なんて思いながら
俺は楽しそうにゲラゲラ笑っている村上に訊いた
「ところでさお前、佐藤弁護士って知ってるか?」
「あ〜?佐藤弁護士って、あの、最近たまにテレビとかにも出とる渋いおっちゃんの事か?」(←渋いおっちゃんて)
「そう、その人」
「知っとる知っとる!俺、先週そのおっちゃんがやっとる言うギャラリーの取材に行ったばっかや!」
「マジで!?それってさ、このギャラリー?」
なんたる偶然だよとか思いながら、俺は先日智くんが持ち帰った名刺を村上に見せた
「ギャラリー佐藤!そうそう、ココや!
…って、何で櫻井くんがこんなもん持っとるん?」
「いや、実はさ、何だか智くんがこのギャラリー佐藤で絵を描かないかって誘われててさ…」
「へぇ、スゴいやん!」
村上はこれでもかって位目を見開くと、バコンと俺の背中を叩いた
「ってぇな!(怒)
てか、スゴいやんて、……やっぱ、凄いことなのかな?」
「そりゃそうやろう!
だってオーナーのお眼鏡にかなったちゅうことやろ?
この佐藤弁護士、なかなかの目利きらしいてな
まだ名前が売れてないけど有望な画家を発掘しとる言うんで、業界でも有名らしいで!」
「へぇ〜……そうなんだ」
(んじゃあ、やっぱり悪い話じゃないのかなぁ?)
「あ、そうや!」
やっぱりオーナーが独身のイケメンだからと言って断るべき話では無いのかな
なんて思っていた俺の背中を
村上が再びバシンと叩きながら叫んだ
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