第28章 智、画家になる!?、の巻
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(…弁護士の道楽ねぇ…)
俺は隣ですやすや静かな寝息を立てて眠っている智くんの髪を撫でながら
その、超絶可愛い寝顔をじっと見詰めた
智くんはその昔、画家を目指していた
今でも、時々教授の所で絵を描いているのだから、もしかしたらまだその夢を諦めていないのかも知れない
もしもそうであるならば、画商のお抱えになって絵を描く事は
社長の道楽だろうが何だろうが、智くんにとっては願っても無い話だろうし
智くんが望むのであれば、俺としても、是非とも叶えてあげたいとも思う
……が
(…弁護士の佐藤さんって…もしかして、佐藤浩市さんの事かなぁ?)
実を言うと
智くんが持ち帰った名刺の画商のオーナーだと言う弁護士に、俺はちょっと心当たりがあった
その弁護士は、たまにコメンテイターとして雑誌やテレビなんかにも出ている敏腕弁護士で
前にテレビに出ていた時に
「趣味が高じてギャラリーを開いた」
とか、言っていたのだ
(有名な人だし、もしその人が名刺のギャラリーのオーナーなら、怪しい話しでは無いとは思うんだけど…)
問題は…
「…………」
俺は智くんを起こさない様に、そっとベッドを抜け出した
「……確か、先月号に……
…………
……あ、あったあった」
俺は雑誌が入ったラックから、定期購読している(自社の)経済誌を引っ張り出した
表紙には、四十半ばの渋いイケメンがにこやかに微笑んでいる写真が掲載されていた
その下に
『敏腕弁護士、佐藤浩市さんに訊く日本の未来』
と書かれたタイトルが躍っている
「…………」
そう、問題は。
(画商のオーナーが、イケメンで有能な弁護士だなんて…しかも、独身だぞ!?)
「……………危ないがな(泣)」(←て、ことらしい)
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