第28章 智、画家になる!?、の巻
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「画商?…わざわざ図書館まで智くんに会いに来たの?」
「うん」
夜
何時もの時間に帰ってきた翔くんに、今朝僕を訪ねてきた画商さんの話しをした
翔くんは僕の話を聞きながら着替えを済ますと、僕の手から名刺を取って眺めた
「………ふう〜ん………ギャラリー佐藤、ね」
「なんかね、その、僕の絵を気に入ってくれたとか言う社長さんは、本業は弁護士さんらしいんだけどね?」
「うん」
翔くんは話を聞きながら僕の肩を抱いてリビングに移動した
僕は移動したリビングのソファーに翔くんと並んで座って、話を続けた
「それでね?その弁護士さんがね?
趣味が高じて画廊を持って、気に入った画家さんの絵を売買してるんだってさ」
「…で、智くんの絵が気に入ったから、自分の所で描かないか、…て?」
「そうなの」
僕は並んで座った翔くんの腕にキュッと抱き付いて、下から翔くんの顔を見上げた
「ね、翔くん……どお思う?///」
「ん〜……話を聞いただけじゃ解らないなぁ
第一、どうやって智くんの絵を手に入れたんだろうその人?
智くん、絵なんか売った事あったっけ?」
「……多分、昔……教授のトコを出て、独りで暮らしてた頃描いた絵だと思う……」
「あ…………ああ、そうか」
「………」
僕は、何故か申し訳なさそうな顔をする翔くんから顔を逸らして俯いた
それは
僕がまだ、大学生だった頃の事で
…大怪我をして、入院して…
退院してから教授の元へは帰らずに、1人で見知らぬ土地で暮らしてた頃
僕は生活費の足しにと、描いた絵を売っていたのだ
だから、社長さんが手に入れたと言う絵は
…潤くんに、拾われるまでの、五年位の間
その間に描いた絵に違いないだろう
「ごめんね、智くん……辛いこと思い出させちゃったね」
翔くんは、申し訳なさそうに眉をハの字に下げたまま
俯く僕を、ぎゅっと抱き締めた
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