第27章 にのあい舞妓茶会事件!、の巻
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「………そっか、お母さんの、再婚相手の、ね……」
相葉くんは、俺の話を聞き終わると
もそもそとサンドイッチの包みを開け始めた
俺は、キレイに骨が外してあるサバの塩焼きを一口大に千切りながら言った
「ごめんね相葉くん、あの時相葉くんにちゃんと話ときゃよかったんだよね?」
「櫻井くんが謝ることないよ
…ニノは、ちゃんと訊いて欲しそうな顔してたのに、ちゃんと訊いてやらなかったのは、俺なんだから」
俺は、切り分けたサバを一旦弁当箱の中に戻すと
相変わらず飯を食う気配を見せない相葉くんの方を向いた
「………ニノ、イケメンシェフんとこ、行ったのか?」
「………うん」
「………そっか」
「………うん」
今にも泣きそうな顔をして
今にも消えてしまいそうな声で
ただ、「うん」とだけ繰り返す相葉くん
その姿は、何時もの明るくて元気な相葉くんからは想像できない位に痛々しかった
「………いけ好かない野郎だったよ」
「……………え?」
俺は、視線を相葉くんから愛妻弁当へ戻して言った
「何があったのかは訊かないけどさ
何があっても、悪いのはニノじゃない
…アイツだと思うよ」
「……………うん、解ってるよ」
「………そっか………なら、それ以上、俺が言うことは無いよ」
「……………うん、あり、がと」
サンドイッチを握り締めて俯いている相葉くんの声が、震えていた
俺は、そんな相葉くんの方には目を向けずに
黙って激ウマな智くんの愛妻弁当を
時折隣から聞こえる小さな嗚咽と、鼻をすする音を聞きながら食べた
「じゃあね、櫻井くん、ありがとう」
「うん。じゃあね」
結局
相葉くんは買ってきたサンドイッチを一口も食べなかった
開けてしまったサンドイッチがカピカピになっては勿体ないと思った俺が、そのサンドイッチを平らげた後
時間も時間だったので、俺は相葉くんと別れてオフィスに戻る事にした
「相葉くん」
「……なに?」
「いや……サンドイッチ、ご馳走さま」
「……うん(笑)」
俺は、やっと少し笑った相葉くんに手を振って
足早にオフィスへと戻った
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