第27章 にのあい舞妓茶会事件!、の巻
.
「…………何で…………今更、そんなコト言うの?」
俺の見当はずれな叫びを聞いて
雅紀が痛いような顔をして言った
その顔を見て
ズキリズキリと胸が締め上げられるように痛んだ
でも
一度堰を切って溢れ出した言葉は止めることが出来ずに
俺は、痛みを堪えるような顔で俺を見つめる雅紀に向かって、更に叫んだ
「今更も何もねぇよっ!事実は事実だ!」
「……だから、これ見よがしにそんなもの付けさせたの?」
「だったら何だよ!」
「……何時から?」
「……え?」
何時も余裕で、ニコニコ笑っている雅紀の顔からは
とっくに笑みが消えていて
代わりに
見たことが無いくらい
傷付いた顔をしていた
「…この頃、様子がおかしかったのは、そいつと会ってたからなの?
そいつと…………浮気、してたから?」
雅紀の口から
“浮気”と言う言葉が発せられるのと同時に
心臓に、抉られるような痛みが走った
「………何で、今更……何で、今なの…?」
「…………」
「…………」
何も返事が出来ない俺を、じっと見つめていた雅紀が
ふらりと立ち上がる
「…………ごめん、俺………ちょっと、頭冷やして来るわ」
「……………」
雅紀はそう言うと、静かに寝室を出て行った
行かないでくれと、言いたかった
だけど
まるで、首を締められているみたいに、呼吸さえままならなくて
俺は、部屋を出て行く雅紀の背中をじっと見詰めたまま
一言も何も言えず……声を発する事すら出来なかった
「………………」
そして俺は、そのまま身動き一つ出来ずに
ただ茫然とベッドの上に座り込んで
雅紀が家を出て行く玄関の戸の開閉の音を聞いていた
.
「…………何で、俺………何、やってんだよ、俺…………」
それから俺は
部屋を出て行った雅紀の後を追うことも出来ず
一人ぼっちになった寝室のベッドの上で、震えて泣きながら
雅紀が帰ってくるのを待って居た
だけど、その日
雅紀は、夜になっても
帰っては、来なかった
.