第24章 初ガチ喧嘩、の巻
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「………………はぁ」
「何や櫻井くん、さっきから溜め息ばっかしよるな!」
「………………はぁあ」
「って、聞いとんのかいなっ!」
「………………聞いてねぇ」
「いや、聞いとるがなっ!!!」
(……もう、放っておいてくれよ(泣))
「……………はぁ〜〜」
俺は、社に戻ってから何度目だか数えるのが憚れる程繰り返し付いたため息を盛大について
ガックリと項垂れた
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例の高級レストランの前で松本くんと分かれた後
俺は松本くんに掴まされた智くんのぽ……いや、ウエストポーチ片手に、智くんと二ノが走り去った方へ二人を追い掛けて走った
のだが
もう、何処にも二人の姿はなく
まだ仕事中だった俺は、仕方なく予定通り仕事をこなして社に戻っていた
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「……………はぁ」
俺はまたため息をつくと、一向に進まない仕事の書類を無意味にペラペラと捲った
(………智くん、どうしてるかな………今、二ノと一緒かな………)
「………」
…本音を言えば
松本くんにああは言われたものの
あの時、追い掛けた先に智くんが居たとしても
何と言って声を掛けたら良いのか解らなかった
(だいたいさ、自分でも何であんなコト言っちゃったんだか解らないんだよな…)
「……………はぁ」
矛盾してる、と
自分でも思う
智くんを
その過去ゴト愛しているのは本当だし
松本くんとのコトがあったからそこ今の智くんが居るんだとも思う
だから
智くんが少なからず松本くんを愛し続けているのは仕方ないし、ソレを容認しているつもりでいた
実際
以前、彼のことをどうしても思い出してしまい、俺に気を使う智くんに
彼を忘れるなと言ったのは
他ならぬ自分だった
(……とか言って、実際智くんと松本くんが一緒にいるだけで、必要以上にヤキモチ妬いてさ……
……挙げ句、あんな非道いこと言って……)
「…………」
俺の頬を平手打ちした後の
智くんの何とも言えない泣き顔が脳裏に浮かんで消える
「………あんな顔させて………最悪だな、俺………」
書類の山にバフッとうつ伏せたら
ポケットの中の携帯が震えだした
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