第5章 不完全で不器用な
その後、TVを見て笑い合って過ごした。
「すっげーくだんねぇ番組だったなー。」
「そうだね、でもなんか笑っちゃった。あ、私お風呂入って来るね。」
「ん、俺が洗ってやろうか?」
「変態!自分で洗うからいいですー。」
「変態って酷ぇなぁ。冗談だよ、ゆっくり入って来な。」
「うん。」
彼女が出て行くと、一旦横になってTVを消した。
意外と元気があるように見える。もしかして案外すぐに傷は癒えるのかもしれない。
そんな風に考えながら、あれこれこれからのプランを考えていた。
「遅いな…こんな長風呂だったっけか。」
入浴してから30分以上経っている。何となくソワソワし、脱衣所へ向かった。
扉を開け、浴室のドアの前にそっと立つ。
中からはシャワーの音に掻き消されそうな彼女のか細い泣き声が聞こえた…。
「…さくら…。」
俺は先程までの浮かれた自分を呪った。
そんなにすぐ癒える傷などあるはずも無いのだ。
自分の無力さに呆れ、俺は声をかけてやる事すらも出来ずに脱衣所を出た。