第4章 息が出来ないほど
「なぁさくらー、お父さんから聞いた?」
「うん?なにを?」
「俺がある約束を果たせたら、オマエとの結婚を考えてもいいって話。」
「えっ、本当!?」
荷物を代わりに詰めて貰っていると、彼女は固まって驚いた声を発した。
どうやらしばらく一緒に住んでいいという話までしか聞いてなかったらしい。
「あのお父さんが?」
「あぁ、言ってくれた。」
「ねぇ万次郎ー。約束ってなにー?」
「んー、それはナイショだな。答え言っちまったらつまんねぇじゃん。」
俺はニッと笑うと、彼女は少しむくれた顔で口を尖らせた。
「万次郎のケチー。」
「ハイハイ、荷物早く詰めて戻ろうぜー。」
「あとしばらく家に居ていいように、食料品買い溜めしなきゃね。」
「あ、俺どら焼き買わなきゃ。」
「まだ好きなの?本当飽きないねぇ。」
「ん、たい焼きとどら焼きは何回食っても飽きねぇな。さくら、こっち来て。」
「もー、なぁに?」
細い腕を掴まえ引き寄せると、そのまま口付けた。
「オマエもな。」
「万次郎のバカ!たい焼きと一緒にしないでよ!」
そう言いながら顔を真っ赤にして荷造りを再開させる彼女がとてつもなく愛おしかった。
程なくして荷造りが終わり、スーパーに寄ると彼女のマンションへと向かった。