第4章 息が出来ないほど
「良いんですか?」
予想打にしなかった言葉に、胸が早鐘を打った。
彼女の父は困惑しながらも笑ってくれている。
「なんだ?君が言い出したことじゃないか。」
「はい…ありがとうございます!」
「さくらを呼んでくるよ。一緒に荷物を取りに行きなさい。私も出張の準備をする。」
「分かりました。」
深々とお辞儀をし、松葉杖を付いて彼女に声をかけると玄関へと向かった。
彼女の父が呼んでくれたタクシーに乗り、自宅へと帰った。
「ただいまー、じいちゃん居るか?これからしばらくさくらの家に泊まることになったから。」
「万次郎。退院したのか。さくらちゃんも久しぶりだな。」
「おじいちゃん、お久しぶりです。」
「今回は万次郎が巻き込んでしまって本当に済まなかった。嫁入り前の娘さんに、なんて詫びたら良いのか…申し訳ない。ほら、オマエもきちんと頭を下げろ。」
じいちゃんが声を震わせ頭を下げている姿を見て、俺は本当にとんでもない事に巻き込んでしまったのだと再確認させられ、頭を下げた。
親同然の年老いたじいちゃんにまで頭を下げさせ、自分の情けなさに心が沈んでいく。
「そんな…おじいちゃん、頭を上げてください。私が今居るのも全部万次郎のおかげなんですよ。きっとまた、万次郎が居れば大丈夫ですから、ね?万次郎も頭上げてよ。」
「…万次郎、二度と不幸な目に合わせないと誓えるか?」
「あぁ、そんだけの覚悟を持って全部終わらせて来たからな。落ち着いたら自分の道見つけて働くよ。そんでさくらもじいちゃんも養って行くから。…心配かけて、ごめんな。」
「…さくらちゃん、こんなバカな孫だがもう一度機会を与えてやってくれないか?」
「もちろんです!私には万次郎が必要ですから。」
そう言ってニコっと笑い、俺を見上げると行こっかと呟いた。
「じいちゃん、本当にごめん。これから荷物詰めてさくらんち行ってくるから。」
「分かった。気をつけるんだぞ。」