第4章 息が出来ないほど
ガチャリ、ゆっくりと扉が開いて彼女の父が顔を出した。
「おかえり。って…君は…佐野君か…。良く私の目の前にのうのうと顔を出せたな!!」
俺の顔を見た途端怒りを顕にして、ガツンと頬を殴られる。力が入らない俺は為す術なくその場に尻餅をついた。
「君のせいで娘は傷だらけだ!分かってるのか!?今までどれだけの人を傷付けて来た?君も捕まれば良かったんだ!」
「……………。」
「お父さん!?やめてよ!万次郎も傷だらけだよ?見てわかんないの?」
俺を庇うように立ちはだかった彼女を手でそっと退かすと、俺を見下ろし更に言い放った。
「君と娘が付き合わなかったら…こんな事にはならなかった。それは分かってるだろ?高校でやっと別れてくれたと思ったら、またこれだ…。いい加減身を引いてくれよ!」
「菊池さん、申し訳ありません…。全て俺の責任です。」
「当たり前だ。」
「でも、引けません。さくらを手離すなんて出来ません。俺の人生にはさくらが必要なんです。」
そう言って俺は彼女の父に向かって疼く脚で正座をし、土下座した。
すると今度は肩を思い切り蹴られた。ガッと鈍い音が廊下に響く。
「っ………。」
「お父さん!!やめて!」
「俺は全部片付けて来ました。これからは更生して働きます。そして、彼女が卒業したら結婚させて下さい。約束したんです。」
「…オマエはどれだけ私を怒らせるんだ!!ダメに決まっているだろ!さくらもこんなクズなんかやめろ、いい加減目を覚ませ!」
「お父さん…私、万次郎にこの命助けて貰ったの知ってるよね?小6の時、お母さんいない事で毎日からかわれてさ。それが辛くて辛くて仕方なかった。」
「…………。」
「そんな時、万次郎はみーんなやっつけてくれてさ。それから毎日寄り添って、笑わせてくれたから今生きてるの。だから、二回目の人生は万次郎の為に生きるって決めてるの。」
彼女の話に耳を傾け、深呼吸をすると彼女の父は声色を変えて俺たちに声をかけた。
「……二人とも、一旦家に上がりなさい。」