第4章 息が出来ないほど
「万次郎?」
「さくら…俺はもう退院する。オマエはこれからしばらく俺の家に住め。」
「ダメだよ、まだ傷口安定して無いでしょ?先生に怒られちゃうよ。」
「もう大丈夫だ、安静にして感染症起こしてないか定期的に病院に通えばいい話だ。」
「急にどうしたの?」
「良いから。とにかく俺は退院する。」
俺は真剣な顔で目を真っ直ぐ見据えた。彼女は何とも言えない顔で困惑している。
「なに?どうしたの万次郎…?」
「行くぞ、こんなとこに来ちゃダメだ。」
「………。」
彼女を先に屋上から出すと、その後を杖をつきながら降りていった。
そのまま無理を言って退院手続きをし、荷物をタクシーに載せてもらうと、一旦彼女の家に向かった。
「なぁ、家にお父さん居るか?」
「居るよ…あれから休んでる。」
「そっか…。挨拶させて。」
「でも、今は辞めた方がいいと思う…。」
「遅かれ早かれキッチリ謝んなきゃいけねぇ。今謝る。」
「うん……。」
やがてマンションに着くとオートロックを開け、エレベーターに乗り込んだ。
「本当にいいの?」
「あぁ。」
その心配そうな顔は、彼女の父の怒りを想像させた。
部屋の前に着くと彼女は一呼吸置いて、インターホンを押した。