第4章 息が出来ないほど
検査の結果刺し所が悪くなかったせいか後遺症は無く、胸と脚の傷口が塞がれば普通に生活が出来るそうだ。
「良かったね、万次郎!」
「ん、ありがとな。さくら、家に帰って横になってな?座ってんの、その…痛てぇだろ?」
「万次郎は自分の心配だけしててよ。私は大丈夫だから。ほら、このクッション柔らかいの!」
そう言って笑う顔は、あまりにも痛々しくて俺は思わず目を逸らした。夕日が差し込む病室に沈黙が流れる。
すると、夕食が配膳されて来た。
「夜はお肉だね。ここのご飯美味しい?」
「んなワケねーじゃん。」
「じゃあ退院したら私が作ってあげるね。」
「マジで?早く退院しねーとな。さくらもなんか食わねーの?昼も食ってなかったよな?」
「私は…帰ったら食べるよ。ほら、冷めちゃうから食べて食べて!」
その日は結局、面会時間ギリギリまで俺の傍から離れようとしなかった。
全てが終わり二人きりで過ごせて穏やかな気持ちになれる反面、どこか影を落とすその顔は俺の不安感を煽った。
そんな事を考えていると、妙に頭が冴えて寝付くのに時間がかかってしまった。