第4章 息が出来ないほど
「万次郎、起きてよ…」
「万次郎が居なきゃ私生きてけないよ…」
「私なんかどうなったっていい。お願い、目を覚まして」
寂しげに訴える彼女の声が聞こえる、何度も何度も俺を呼ぶ声に意識が導かれていく。
「さくら…一緒に来ちゃダメだろ…」
うっすらと目を開ける。どこだここは。全体が真っ白だ。右手には俺の手を包む暖かな感触があった。
「万次郎!?目、覚めたの?」
「ここどこ…さくら…?」
「良かった…起きてくれた…!」
「ん…いってぇ…」
見渡すとどうやらここは病院のようで、俺はベッドへ横たわっていた。
「ここ…病院?俺は何してたんだ?」
「うん、3日間起きなくて…心配で…」
「ずっと付いててくれたのか?オマエの怪我は…?」
「………私は、大丈夫。アフターピルも処方して貰って飲んでるから、その…心配しないでね?」
そう言うと目を伏せた。『心配しないでね』と言うのはきっと予期せぬ妊娠の事だろう。
九井に無理矢理犯されたんだ、事情聴取もされたろうし精神的にも身体的にも大丈夫な訳が無い。
それなのに、俺を気遣う姿勢に胸が傷んだ。
「悪ぃ…言葉が見つかんねぇ…」
「いいよ、万次郎が無事だったんだもん。今看護師さん呼ぶね!」
ナースコールを押し、俺が起きた事を告げると車椅子に乗せられ慌ただしく色々な検査が始まった。