第3章 瞳に映るは
「王であるマイキーが俺たちを裏切るってなんだよ?」
「……。」
「散々喧嘩の駒にしといて満足したらはいサヨナラか?あ!?」
「オマエらには悪い事をした。人を傷付けても何も生まねぇ。俺は次の抗争で人殺しをする寸前まで堕ちた。」
「は?別にいーだろ一人や二人。」
「良くねぇよ、なら俺を殺してみろ。」
「…俺もう殺っちまってっから今更どうでもいいんだわ。王が裏切んなら殺すまでだ。」
「テメェに俺は殺せねぇよ。」
春千夜はいつもの口調も忘れ、顔付きも変わり完全に頭がキレていた。『殺す』と言う言葉も、本気の『殺す』という意味だろう。
張り詰めた雰囲気が漂う。春千夜以外は適わないと思ったのか、誰も凄んでくる様子は無かった。
「はっ……殺せねぇだ?マイキー!九井はどこだと思う?」
「あ?」
そういえば九井が居ない。何故だかザワっと胸騒ぎがした。
「ヒント!マイキーの指輪をくれた女はだーれだ?」
「オイ三途、それ答えだから。ヒントじゃねーよ。」
「っ…!」
ドサッと地面に転がされたのは、朝ホテルで別れて来た彼女だった。
手首に手錠をされ足首はガムテープで巻かれている。
ドクンと心臓が跳ねたが、他人の振りを装う為顔色を変えず無言を貫いた。
「マイキー!スッゲェ可愛い女いるのに嘘つくなよ。」
「九井…知らねぇ女攫って来んな。捨てて来い。」
「この女もマイキーの事知らねぇって言うけどよ、知らねぇ女とホテル入るのか?ほらよ。」
九井がぴらっと撒いた複数の写真が足元に散らばった。
それは、昨夜海で抱き合っている所やホテルに入る場面だった。勘のいい九井に尾行されていたのだ。