第21章 大渦の中心で溺れて死ぬ
珍しく声をあげ、眉間にシワをよせグッとオレを見つめてくる。こんな姿は初めて見た。
タケミっちを褒めちぎったのが気に入らないのか?とにかく、オレが、あの無愛想なをこんな風にしている事に間違いはない。
なんだよそれ。反則だ、バカ。
「くん、可愛い…ッ」
………ああ、ヒナちゃん。まったくその通りだ。
「ッ…!!!あーー!!ーーー!!」
「んぶっ」
「クソー。はぁ、何張り合ってんだよ、可愛すぎるだろ。あー…。もう無理。帰ろうぜ。お前の家行く」
「ふざけんな、まだなんも食べてねぇぞ俺は」
思わず抱きしめてしまったが、いいから離せ!と腕を突っぱねられしぶしぶ解放する。
「で、お前のカッコイイとこってどこなんだよ?」
我ながら意地悪な質問だと思うが、こいつの反応が一々おもしろくてついつっついてしまう。
「そ、それは………」
勢いで言ったはいいものの、自分では思い浮かばなかったのだろう。まあ、オレはこいつのかっこいいところを沢山知っているが。
「あ、くん、そういえばニュースみたよ!アジアコンクール優勝おめでとう!本当にすごいんだね」
「え、あっ…!そ、その…ありがとう……いや、全然、俺なんかまだまだで………」
八戒程ではないが、こいつも女が苦手らしい。
ヒナちゃんの助け舟にも見事に乗りそびれている。