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【東リべBLD】君の鼓動を旋律に【松野千冬】

第1章 出会い





『音楽部よりお知らせです。

1年1組くん。
中学生全国ピアノコンクール最優秀賞に選ばれました。』



1年の夏。
校内放送が流れた。

同じクラスのやつが、なにやらすごい賞を取ったらしい。
正直どうだっていい。興味がない。
そもそもって誰だ?


「千冬!お前また先輩ボコしたんだろ?やっぱすげーな!」
「呼び出されたからやり返しただけだっつーの」
「でもすげえよ!なあ、放課後カラオケ行かね?」
「悪い、場地さんと用事あるからまた今度な」

初めてカッコイイと思ったその人に、付いていく。
そう決めた時からオレの世界は色づき、胸を躍らせた。

オレもあの人のようなカッコイイ不良になりたい。
それ以外の事はどうだっていい。
それがオレの青春だ。





数日後。
昼飯を食ってなんとなく時間を持て余していたオレは、立ち入り禁止の屋上に足を踏み入れた。
一人かと思ったが、なにやら話し声が聞こえる。先客がいたようだ。
ふと荒だったような声が聞こえ、気になり様子を覗いてみる。

それは、明らかにカツアゲの現場だった。


「なぁ僕ちゃん、お金もってんだろぉ?」
「………」
「怖くて声出ねえってか?金渡したら解放してやるって。早く出せよ」
「ピアノのエリートが金ないわけねーよなぁ?」

ピアノのエリートという単語。
もしかしてと思い輪の中心をみると、そこには思った通り同じクラスのがいた。

小さく細い体に地味な存在感。
長い前髪に、度数の高そうな分厚いダサ眼鏡。
あーあ、そりゃ狙われるわ。


「金ないです」


鈴の音のような、高い声が響く。


「あぁ?」

「あんたらみたいなのに渡す金はないです。もう戻っていいですか?」


思わず目を見張る。


あいつを取り囲んでるのは、校内では有名な不良の先輩達だ。

そんなヤツらを相手に、怯まない姿勢。


気に入った。

「おい」
「ゲッ、松野!?」
「なにカツアゲとかダセー事してんだよ、はやくどっか行け」
「ッ、クソ!年下のくせにしゃしゃりやがって…!覚えとけよ!!」

そう吠えて、先輩達は足早に屋上を後にした。

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