第12章 You're my other half(シュヴァリエ)
「行ってくる」
「いってらっしゃいシュヴァリエ様」
馬に乗ったシュヴァリエ様はマントを翻し、ロードライト城の門をくぐった。侵攻に備えて約三週間の大規模軍事演習に出発したのだ。シュヴァリエ様の後に続いてクラヴィス、リヒト、レオンも馬に乗って出ていく。それを見送りながらベルは心の中でこぶしを握った。
「よし。私は私の仕事をしなきゃ。」
「相変わらず真面目だね。前までのアンタなら付いて行きそうだったのに。」
「私はもうベルじゃないよ?次期正妃だから我儘ばかり言ってられないよ。」
「そんなベルも大好きだけど、寂しくなったらいつでも言ってね?俺がいるからさ!」
「平気だよ、リオ。寂しくならないようにってシュヴァリエ様がいつも付けてる香水をくれたんだ。」
「へえ、王サマそんな趣味があったんだ。あ、アンタの趣味かな?」
「ノクト、私は変態じゃないから」
「そうとは言ってないけど?」
「うっ。わ、私は変態じゃない……よね?リオ?」
「俺はどんなベルも愛してるよ。」
「はっきり否定してよ……」
軽口を叩きながら三人で外政派の執務室に向かって歩いた。
――それからは仕事に仕事、仕事の毎日だった。少しでも帰ってきたシュヴァリエ様を楽にしようと全力で書類を捌いているつもりだった。が、普段のシュヴァリエ様の仕事量を甘く見ていたようだ。リオが紅茶を持ってくるまで休むのを忘れてしまうほどには、仕事に没頭していた。いつのまにかシュヴァリエ様達を見送った月曜日から四日が経ち、金曜日になっていた。