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イケメン王子1口サイズ小説集

第11章 クリスマス事変(シュヴァリエ)


ぱらぱらと雪が降っている。厚着していても震える寒空だが、木の葉っぱに積もった雪は美しく、見る人を魅了させる景色だ。

「ふぇ……ひっく」
「このお兄さんは怖くないよ。ほらプレゼントをくれるって……」
「うわああああん!」
「はあ……」

チラリと横に立っているシュヴァリエ様を見ると、なんとも言えない微妙な表情をしている。鼻に落ちてきた雪を拭い、2ヶ月前のことを思い出した――


「シュヴァリエ様、サンタさんになって街の子供たちにプレゼントを配りませんか?シュヴァリエ様はもう恐ろしい獣ではありませんから。優しくて素敵なシュヴァリエ様をアピールしたいんです。」
「……泣かれるだけだと思うが。だが、報酬次第で付き合ってやらなくもない。」


――紅玉の本を報酬として約束し、プレゼント会をやろうと決めたのだった。私はできる限りの笑顔を作り、シュヴァリエ様に向き合った。

「まだまだこれからですよ!少しずつ街の人たちの目線は変わっていきますから……!」
「どうだかな」

そう言いながらも、シュヴァリエ様はビクビクした4歳くらいの子にプレゼントを配った。この年齢になると怖い印象よりもプレゼントの欲に負けるのかもしれない。
”変わる”――とは言ったが、子供たちは笑顔になる気配がない。シュヴァリエ様も居心地が悪そうにぎこちない手つきでプレゼントを配っている。私の気持ちだけがから回っているのだろうか。

「やはりプレゼント会などやるべきではなかった」

そんな声が聞こえてくるようだ。
崩れそうになった笑顔を作り直し、冷たくなったプレゼントをシュヴァリエ様に手渡した。シュヴァリエ様の表情を再び伺うと、鋭い目つきで周囲の親を睨んでいた。

「ふぇっ……」

ドンッ

「きゃあ!」

集まっていた親が突き飛ばされたかと思うと、とても品があるとは言えない風貌の男たちがぞろぞろと広場に入ってきた。
シュヴァリエ様は泣き出した子供にプレゼントを押し付け、族の前に躍り出た。

「愚鈍、子供を一か所に集めろ。人身売買を生業とする集団だろう」
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