第4章 小さな猛獣使い(クラヴィス)
夕飯を食べ、入浴も済ませた夜中。私は部屋で1人、嗚咽を漏らしていた。
「イタチさん!イタチさん!ごめんね僕のせいで、こんなにボロボロに… 」
「うさぎさんのせいじゃないわ。私がうさぎさんと一緒にいたいって願ったからよ。」
お願い元気になって。そう願いながら、うさぎさんは一生懸命イタチさんを看病しました。
すると、なんと不思議な事に、突然優しい光がイタチさんを包み込み、怪我が瞬く間に治っていくではありませんか。
「ありがとう。うさぎさんの愛で怪我が治ったわ。これからもずっと一緒にいましょうね。」
2人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
「めでたしめでたし…」
かつてこんなに泣ける絵本があっただろうか。子供向けの読み書き教室のために用意したが、禁断のラブストーリーに子供達もお勉強どころでは無いかもしれない。しかし、これなら感受性も育てられて一石二鳥だろう。
枕元の灯りを消し、掛け布団にくるまる。
――もしクラヴィスさんが兎になったら、可愛らしさしか残らないんだろうな。カッコつけたい本人は拗ねちゃうかもしれないけど… 公務なんてできないし、ずっと傍にいてもらおう。最近一緒にいられる時間がますます減ったな。今日だって…
ありえない想像の世界に、意識はすぐに沈んでいった。
――――
朝の清涼な空気の中、徐々に意識が浮上する。私にしては早い時間だ。ふかふかの枕に、柔らかい掛け布団、手触りのいい毛布、冷たく澄んだ空気とは相反するベッドの温もりは、まさに天国で温泉にでも入っているかのようだ。
しかし、幸せな時間は唐突に終わりを迎えた。リオのモーニングコールまで寝ていたかったが、お手洗いに行きたい。仕方がない、ベッドから出よう。
――私はいつの間に、掛け布団がめくれないほど腕が短くなったんだろう。それに真っ白な毛が腕を覆って、肌が見えない。これは私の腕?いや、これは……
大急ぎでベッドサイドに置いていた鏡で自分の顔を見る。そこには、可愛らしい真っ白な兎が映っていた。
どうやら私はまだ夢の中にいるらしい。