第3章 好奇心はルート解放の鍵(キース)
今年もクリスマスがやってきた。雪化粧をした薔薇園は輝きを放っているかのような美しさだ。城下では鼻がじんじんとする寒さの中、サンタさんが子供達にお菓子を配っている。
それとは対照的に暖炉で温まった静かな客室で、キースさんは瞳を揺らして目に見えて動揺していた。
「このネッグウォーマー、本当に俺にくれるのかい?」
「はい!この時期、寒さで肩こりが悪化しますから。それを着けて暖かくして下さい。」
キースさんには以前から惹かれていた。王子らしい風格を持ちながら、農民に混ざって畑を耕す心の温かい方だ。
しかし、優しそうなこの方には裏の顔があるらしい。目の前のキースさんは自然体に見えるが、別人のように冷たい目をする時がある。と言われてしまえば、気になってしまうのが人の性だろう。
そんな好奇心も相まって、プレゼントと2人だけのお茶会で親密度を上げる作戦を実行したはいいが、プレゼントを渡すとなぜか困惑してしまった。
数秒の沈黙にも耐えられず、畳み掛ける。
「ごめんなさい、やっぱり他国の庶民からの贈り物なんて困りますよね。いつも仲良くしてくれてましたし、久しぶりの訪問でつい浮かれてしまったんです。それとも好みじゃありませんでしたか?翡翠色だったのでキースさんに似合うかと思ったのですが――」
「ああ、ごめん。ありがとう嬉しいよ。大切に使わせてもらうね。」
キースさんは取り繕うように、ふわりと柔らかな笑みを浮かべた。
「なら、どうしてあんなに困った顔をしていたんですか?純粋に喜んでるようには見えませんよ。」
「………君は俺に好意を持ってくれているみたいだけど、ごめん。俺は君が思ってるような人間じゃない。何も持ってない人間だよ。それに他国の王子だ。綺麗な瞳をした君には、ロードライトの王子達がお似合いだと思う。」
暗い瞳でそう言ったキースさんは、静かにソファから立ち上がった。