第3章 覚悟
彼女は腕の中で小さく震えていた。
…ここからはおれが、志保さんをリードしてあげないと。
「山下さん、私…」
「大丈夫です。もう何も言わないで。どうしてもイヤなことがあったら、その時だけ教えてください」
決意と共に、彼女の言葉を遮る。
目を見て話しがしたくて、彼女の肩を掴んでくるりとこちらを向かせる。
すぐ正面で、ゆっくりとおれの顔を見上げてくる志保さんの瞳は不安に揺れていた。
「内村さん、キスします。嫌なら顔を背けて…」
戸惑ったように目をきょろきょろと泳がせる彼女。
構わずにゆっくりと顔を近づけていく。
志保さん、顔を背けないでいいんですか?