第1章 4月
渋谷駅には、ダルそうにガードレールに座る場地がいた。
あぁ、神様よ、ペヤング一週間分買ってあげよう…。
「場地もなんか買い物?」
「いや?荷物持ち。」
「は?荷物持ちって…。」
場地と三ツ谷くんが会話をしている姿は目の保養になる。場地も、想い人ではないがイケメンではあるから。
後ろからそんなイケメン二人を拝んでいると、
「荷物持ち、俺じゃダメだったの?」
と振り返って私を睨む三ツ谷くん。
こんな鋭い視線を送られたのは初めてだったため、思わず立ち止まってしまった。
「いや…あの…」
「まぁそう怒んなって。」
私が言葉を発せずにいると、場地は三ツ谷くんの肩に腕を回して明るく言った。
ここで喧嘩などしても仕方がないと思ったのか、チッと舌打ちをすると、また前を向いて目的地へと歩み始めた。
嫌われてしまったかもしれない、そんな不安が押し寄せるが、さりげなく場地が隣を歩いてくれたため、いくらか気持ちが軽くなった。
ー場地Sideー
千夏からの着信に期待と不安を入り混じらせて電話に出る。
急に買い物だなんて言うから、デートでもしたいのかと思えば、後ろから聞こえたのは三ツ谷の声。
やっぱりこいつ絡みか、と期待は一気に消え去る。
相談を受けているとはいえ、千夏は自分の想い人だ。
男と一緒だと知っていい気持ちはしない。
「行くか…、」
ぽつりと呟いて、家を出る。
二人のイチャイチャを見るのはしんどい。
でも、まだ付き合っていない以上俺が入る隙間もある。
ならば、邪魔をして、いっそのこと俺を好きになってくんねぇかな…、
集合場所から目的地へ歩き始めると、三ツ谷が俺に突っかかってきた。
話しかけてきた、の方がいいのかもしれねぇが、その視線とオーラはまるで“邪魔すんな”と言っているようだった。
でも、俺は邪魔しに来てんだ。邪魔して何が悪ぃ。
頼られずに怒る三ツ谷と不安そうにする千夏。
俺は千夏の隣を歩きながら、“俺にしとけよ”という言葉をぐっと飲みこんだ。
ー場地Side endー