第1章 My destiny
「今日も、うちの子たちは最高だわ!ねぇ、貴女もそう思うでしょう?」
スタジオ内には、一定のリズムを刻むカメラのシャッター音が響いている。
その音に負けないくらい大きい声が、響き渡る。
本来であればスタッフから注意が入るはずだ。
しかし、声の主に注意できる人物はこのスタジオ内に、存在しない。
『さすが、姉鷺さん!彼らの魅せ方を心得ていますね』
私は、彼女にだけ聞こえる声で称賛の言葉を送る。
さすがに私は、彼女ほど大きな声を上げる度胸はない。
姉:「やだぁ、サラちゃーん。貴女のスタイリングも最高よ」
『TRIGGERの皆さんの着こなし力が、素晴らしいんですよ』
姉:「あらぁ、謙虚ねぇ。まぁ、そういう所も好きなんだけど」
自身に加えて、彼女にとって宝物とも言える3人も褒めてもらえることが、何よりも大好物な姉鷺さん。
私は、そんな彼女の性格を心得ている。
もちろん、私が彼女に伝えている言葉に嘘、偽りなんて無い。
ただ、相手の気分を良くさせることを心がけているだけだ。
この世界で働き始めてすぐに、私が身につけた能力。
それは相手の性格をすぐに把握して、色々な手段を用いてその人のテンションを上げること。
職業柄、クライアントの魅力を最大限に引き出すことが長けている私。
一般人からすると、羨ましいと思われるこの特技。
しかし業界内においては、標準装備されていて当たり前のものだ。
たくさん居るスタイリストたちと差別化するためにも、私にとってこの能力を身につけることは、必要不可欠だった。
お陰で3年目にも関わらず、私はTRIGGERの専属スタイリストを任せてもらえるまでになっていた。