満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第44章 第三者の恋心《宇髄天元》
提出物を数えて名簿を見ながらチェックしていると、そわそわと澤村が落ち着かない。
「…なに?」
「いやあの、ほんとに時間大丈夫?」
「大丈夫だっつの」
「でも、バスケ部のエースでしょう?」
「あーー、うん。まあな」
バスケ部のエース。そう言われて腹の奥が照れ臭くて擽ったい。知ってたのか。知ってくれてたのか。
小学生からバスケをずっとしていて、入学してすぐに新人戦でレギュラーに抜擢された。
やっかむ先輩も少なからずいたが、誠実な態度と謙虚な姿勢と、生まれ持った多少の運動神経とで、周りは認めてくれつつあった。認められるように、努力した。
ゴールに近ければ有利とされる身長は、180センチをこないだ超えて、いまだめきめきと伸び続けている。
「気にすんなって。まだ1年はボール拾い」
それは本当だった。入ったばかりの一年生は先輩の補助、一年生がコートを思い切り使えることはない。
「…そう?…でも、上手だよねえ、紫藤くん」
提出物の名前と名簿を確認しながら、しみじみと澤村は言った。
「バスケ、昼休憩によく校庭でしてるでしょ」
にこっとこちらに笑いかける笑顔に胸が打たれる。
「ーーあ、あぁ。よくみてんな」
嬉しさで、むず痒い。
学校の教室から見える、バスケットボールのゴールがある校庭で、昼休憩はそこで友人たちとよくバスケをするのだ。
たまに教員も入ったりして、それは結構盛り上がるのだ。
あの教室の窓から、澤村がこちらを見ているのに気づいて、つい張り切って本気を出してしまってはいた。
ゴールを決めるたびに、女子生徒のきゃあきゃあと騒ぐ黄色い声援はもう慣れていたけど、
澤村が見ているのならいくらでもかっこよく頑張れた。
こんな気持ちは初めてだった。
中学生の時は、女子たちのことは理解できなかった。集団で行動して、集団で告白され、断ると陰口のようなことを言われ、正直女って面倒だった。
卒業のときは学ランのボタンが無くなり、ついには中の白いシャツのボタンまでもが無くなるぐらいにはモテていた。
イケメン滅びろ、と我妻は言うけど、自分が好きでもない女に好かれたって、別に大した意味はなかった。